「ブラウン管は無遅延」の嘘

RTAや対戦ゲームなど、コンシューマゲームのやりこみプレイ界隈の一部では、「ブラウン管は原理上無遅延」「強くなりたければまずブラウン管を買え」というような言説がまかり通っています。

これらは部分的には正しいです。

 

実際、コンポジット映像で遅延が数μs以下(実質無遅延)を実現しうるのは、今現在実在するテレビではブラウン管のみです。

しかし、ブラウン管全てがそうではありませんし、仮にそのようなブラウン管を手に入れたとしてもゲーム機によってはブラウン管に出力したほうが遅延が大きいケースも考えられます。

ブラウン管についての正しい知識がない状態でブラウン管を購入すると結局遅延のある環境でプレイをすることになることがあります。

 

実際、ブラウン管と極めて低遅延な液晶でプレイした所、極めて低遅延な液晶でプレイしたほうがプレイの結果がよかったという方も存在しています。

 

今回は、ブラウン管テレビの遅延について説明していきます。

目次

 

ブラウン管で発生する遅延たち

「いやいや、ブラウン管の応答速度は数μsオーダーだから実質無遅延でしょ」と思われる方もいらっしゃるかと思います。

確かに数μsオーダーの遅延を人間が体感することは出来ないと思います。(世の中には超人がいっぱいいるので断定は避けます。)

しかし、遅延は応答速度だけで決まるものではありません。

順を追ってブラウン管でも発生しうる遅延を紹介していきます。

そもそも応答速度と全体の遅延は異なる

応答速度はあくまでパネル(表示するところ)の応答速度です。

しかし、ブラウン管のコンポジットなどの入力端子に信号が入ってから、パネルに映像が表示されるまでの間、映像信号はいろんな回路を通っていろんな処理をされます。

これを回路遅延といいます。

「コムフィルタ」の罠

コムフィルタ(くし形フィルタとも)というものがあります。

詳しくはWikipediaのほうに任せますが、簡単に言うとアナログな映像をきれいするためのすごい技術です。

映像作品を鑑賞したり、カジュアルにゲームを楽しむときにはすばらしい技術ですが、これが低遅延が必須な状況では話が変わってきます。

コムフィルタの原理を滅茶苦茶簡単に説明すると、「あえて遅延した信号を作って混ぜ合わせる」というものです。

"あえて遅延した信号を作る"…嫌な響きですね。

ただし、コムフィルタによる遅延は多分多くても1ms未満なので、よほど感覚が鋭敏な人以外はなんとかなると思います。 

ハイビジョンブラウン管テレビの罠

まず、ハイビジョンとは一般に縦720画素の映像のことをいいます。

ハイビジョンブラウン管テレビにコンポジットやS端子あたりの480i/480p(≒縦480画素)の信号を縦720画素の出力装置で出力するには、縦480から720に変換する必要があります。

この処理に多少なりとも時間がかかるため、原理上遅延が発生してしまいます。

変換処理で発生する遅延の量は機種依存なので、ハイビジョンブラウン管を使いたいなら、いろんな機種を買い漁って比較するしかないでしょう。

(ほとんどの場合普通にSDブラウン管を買ったほうが早いです。)

ゲーム機の中にもD/Aコンバータは存在する

「コンバータを噛ますと遅延が出るが、コンバータを噛まさずにアナログ出力できるゲーム機なら遅延はない」という話があります。

しかし、ゲーム機はデジタル機器なので、生成される信号は当然デジタルです。

それをテレビに出力する前にアナログに変換しているのです。

もちろんこの過程で遅延が発生します。

 

ただし、デジタル信号で出力する場合にも、本体内で生成したデータと出力用のデータでは形式が異なるため、どっちにしろ変換処理ははさみます。

肝心なのはアナログ出力への変換とデジタル出力への変換のどちらのほうが時間がかかるかということです。

 

これらの変換によって発生する遅延はゲーム機によって違うので、お使いの環境でどちらの出力方法のほうが遅延が少ないかを検証してからプレイするのがいいでしょう。

人間の脳でも遅延は発生する

「サングラスを片目だけにあててマリオブラザーズをプレイすると、画面が3Dに見える」という遊びは、少年時代ファミコンが家にあったゲーマーならみんなやったことがあると思います。

この不思議な現象は何故発生するのでしょうか。

 

人間は立体を左右の目の視差で認識しています。

わかりやすくいうと、右目と左目では位置が違うので、ものを別々の方向から捉えることができるのです。

これにより、脳は左右の視差が大きい=距離が近い、左右の視差が小さい=距離が遠いと判断します。

 

では何故マリオが立体的に見えるのでしょうか。

サングラスを通してみると視界は少し暗くなります。

暗いと見えづらいので脳による画像処理に時間がかかります。

この時、脳による認識は片目だけ過去の映像を見ているような状態になります。

マリオや敵キャラが移動する方向はだいたい横方向ですね。

つまり、片目だけ過去のマリオをみている時、マリオや敵キャラの左右の位置が異なって見えるため、脳は視差があると錯覚し、キャラクターが画面から飛び出してくるように見えるのです。

 

このことから、脳による処理時間が想像以上に大きいことがおわかりいただけると思います。

 

つまり、画質が極端に悪く、暗部がとても暗くてみるのも大変な低遅延テレビより、多少遅延のある高視認性のテレビのほうが脳による処理が終わるのは早い可能性があるのです。

どうすればいいの?

今となっては生産が終了し、メーカーホームページでも仕様の確認が困難なブラウン管テレビそれぞれの機種の仕様を調べるのは至難の業です。

仮に仕様がわかったとしても、視認性がいいかは買ってみて実際にゲームを起動するまでわかりません。

ガチャの一種だと思って買い漁るしかないでしょう。

 

また、ゲーム機がアナログ信号とデジタル信号両方を出力することができる場合、それぞれの遅延を比較する必要があります。

比較した結果をネットにアップすれば、あなたはヒーローになれるかも知れません。

 

他には、最も遅延の少ないブラウン管と同等の遅延を実現する有機ELディスプレイなどは原理上は作れます。

ただ、需要がないと思われているからメーカーが作ってくれないだけです。

署名を集めてメーカーに需要があることを示したり、あるいは自ら企画してクラウドファウンディングで資金を集めることができれば、夢の無遅延薄型テレビが実現するかも知れません。

 

個人的には素直に既存の低遅延液晶買っとくのがいいと思います。(諦め)

まとめ

ブラウン管は理論上無遅延!

※一部無遅延でない機種もございます。

※お使いのゲーム機にもよってはゲーム機内の遅延によりデジタルテレビのほうが遅延が少ない場合もございます。

※無遅延だとしても映像出力までで脳の処理に時間を要する場合があります。

参考サイト

液晶テレビの遅延検証:キイのブロマガ - ブロマガ