日本のRTAイベントではじめての(?)TASbotを実演した話

RTAイベント「TAS好きの人たちがRTAでわいわいする4」でTASbotを実演しました。

主催のへいきんさんによれば、これは日本のRTAイベントで初らしいです。

ただし、このイベントでは以下のようにガヤも主催も知ったかをするため、この情報が正しいかはわかりません。

そんなわけで、このTASbotを実演した経緯を振り返りながら説明します。

なお、今回のTASbotは、海外の方が作成されたTASbotを元に、ほとんどそのまま組み立てただけです。筆者は特に高度なことはやっていません。

TASbotってなんぞや?

TASとはTool-Assisted Speedrun/Superplayのことで、簡単に言えばツールを使って人間の限界を超えた入力精度のスーパープレイを行うことです。

TASはその性質上一般にエミュレータを使って作成されます。 

TASbotは作成したTASを実機で再生する装置です。

イベントで披露するにいたった経緯

もともと私は何度かRTAの不正検証に関わったことがあります。TASbotは悪用するとRTAの不正に使えてしまう可能性があるため、その検証用に一度組み立てたことがありました。 

イベント主催のへいきんさんにこの話をしたところ、TASbotをイベントで披露することについての強いリクエストを受けました。その縁で今回イベントで披露することになりました。

このイベント、「TAS好きの人たちがRTAでわいわいする」ですが、現在国内で主流のRTAイベントの例にもれずエミュレータでのプレイは禁止されています。

しかし、TASbotは実機でTASを再生するものであり、イベントでの使用は問題ないという判断です。

 

私自身もともとTASbotを本来の用途で使いたいとは思っていたので、再度組み立てることにしました。

 

なお、このとき私はTASbotを引っ越しのときにバラして部品がどこにいったかよくわからない状態になっていました。

 (買い足しました。)

国内TAS動画を取り巻く状況

国内でのゲーム動画は、ゲーム会社によるガイドライン制定のおかげで日の目を浴びることになりました。

しかし、もともとグレーだったゲーム動画の中でも、エミュレータを使うという点で他より黒に近い存在だったTAS動画については、かなり衰退した印象があります。 

特に、任天堂タイトルについては実際に日本語圏においてTAS動画の一斉削除が行われました。それと同時に任天堂の公式ページに投稿してはいけない動画の例として「TAS」が名指しされました。

このとき、国内のTAS製作者は何人も引退しました。

私自身も、この時は投稿していたTAS動画をすべて非公開としました。

  

それからしばらくして、任天堂公式ページからTASやエミュレータに関する記述がなくなり、TAS動画の削除は行われなくなりました。

しかし、当時離れた投稿者や視聴者の方は帰ってくることはなく、日本国内のTASコミュニティは当時と比べて活気がなくなってしまいました。

 

なお、任天堂ガイドラインの内容は英語版と日本語版で異なるため、このガイドラインや削除の影響は英語圏には及んでいません。

TASbotの意義

イベントには多くの人が関わることから、ルール作りが大切です。

日本国内における多くのイベントでは、おそらくは違法ダウンロードROMの使用者が混入することを防ぐ目的からか、エミュレータは禁止。日本特有の同一性保持権や各社ガイドラインの都合からか、ソフトを改造する行為も禁止となっております。

当然エミュレータを前提とするTASはこういった場で披露することは難しいです。

一方、TASbotはどうでしょうか。

コントローラポートに接続する機器こそ非純正機器ですが、実機でTASが再生できます。本体やソフトへの改造も行っていません。

コントローラポートへの非純正機器の接続がどうなのかという議論はあるものの、エミュレータでの再生と比べれば大きく前進していると思います。

 

そして、先述の通り、TASに関する問題は日本国内での問題がほとんどです。

にもかかわらず、TASbotが使われるのはGDQなど海外でのイベントが中心で、日本国内での採用例はない状況でした。

 

話はそれますが、イベントにおけるエミュレータ禁止で互換機は可能というルールは、実際に違法ダウンロードROM等を使用されるリスクを考えれば仕方のないルールではあるものの、やや歪なものではあります。

というのも、エミュレータ本体にはほとんどの場合違法性がない上、互換機は多くの場合それらのエミュレータを使用して作られているためです。

エミュレータは多くの場合、違法ダウンロードを助長するために作られているわけではありません。多くの文化財保全するように、ゲーム作品の保全という目標をもって作られているケースも多いのです。

それらの多くの人たちの努力の上に成り立っている互換機を使う上で、エミュレータ開発者への感謝は忘れないようにしたいものです。

技術的な話

今回のTASbotには技術的な新規性は特にありません。

海外の方が作られたTASbotのクローンです。

github.com

本当は技術的な新規性のあることを何かしらやりたかったものの、無理でした。これについては後述します。

なぜこのイベントなのか

日本には無数にRTAイベントがある中、私が「TAS好きの人たちがRTAでわいわいする」でTASbotを披露した理由は3つほどあります。

最大の理由は、もともとこのイベントの主催者のへいきんさんからの打診を受けたからです。まあ打診受けたらやりますよね。

 

次に、そもそもTAS動画に関するサーバーのイベントなので、TASとの親和性が高かったことがあげられます。

 

最後に、このイベントがグレーを白に寄せるという私がTASbotを組み立てた際の理念とも一致しているように思ったからです。

まず、TAS、RTAのコミュニティは国ごと、ゲームタイトルごと、配信サイトごとなどに細分化しています。残念ながらその中にはゲームROMの違法DLなども平然と行われているコミュニティも存在しています。

少なくともTAS鯖内では、これらの行動に対して注意ができるような空気、気づいた際に運営の方に相談できる空気が保たれています。

 

また、このイベントは自由でやばいと言われますが、なんだかんだ一線は踏み越えないように心掛けています。(個人の見解です。)

特に主催のお二人は下ネタを多用しますが、イベント内でのものは人を傷つけないものになるよう気を使われていることがわかります。

イベントを通してみていて、性的弱者を茶化すようなネタはまずありません。

差別的なネタについては、「嫌なら見るな」という常套句は通じません。被差別者に対する偏見を視聴者に植え付けるなど、社会的な影響が大きいためです。

とはいえ、年齢周りなど個人的にはかなり危ないのではというようなネタもないわけではありません。当然このあたりについて全員の意識を合わせることはできませんし、こうした内容についても「二次元のキャラクターが対象である」ということがわかりやすい工夫があります。

このような、一見してまずそうなネタを配慮によって問題なく行うという方針は、一度は削除対象となったTASを復権させる方針と一致しているように思います。

とはいえ、下ネタがすぎるのでいずれ怒られるかもしれません。その時はその時です。

 

というような話を主催のへいきんさんにしたところ、「雪美ちゃん かわヨすぎる1!!!?!?」(原文ママ)と否定されました。

考え過ぎだったようです。

流したTASについて

古いTAS動画です。

時間がありませんでした。

 

本当はここで技術的に新規性のあるチャレンジをするつもりでした。

 

TASbotには、再生できるゲームと再生できないゲームがあり、NINTENDO64では今までにスーパーマリオ64マリオカート64しか再生されたことがありません。なお、これもへいきんさんに確認はとっていますが、多分知ったかです。

 

今回、私はポケモンスナップ有識者に協力を仰ぎ、ポケモンスナップのTASを再生するつもりでした。

今までにポケモンスナップのTASは作られたことがなく、理由はポケモンスナップをまともに動かせるTAS用のエミュレータは今まで存在しなかったためです。

私がいろいろやって問題のいくつかを解決しました。

 

TAS用エミュレータは実機再現を史上とするTASコミュニティで使われることから、再現度が高いと思われがちですが、別にそんなでもありません。

そんなわけで、N64エミュレータコミュニティの最新の成果を移植したら問題がなんぼか改善した形です。

この改善版については、ポケモンスナップ学会の副会長に提供済みです。

 

しかし、それで作った入力をTASbotに流してもうまくいきませんでした。

原因としてはラグフレーム関連です。私が仕様把握ミスってました。

結局これで時間がなくなり、その後マリオ64有識者に連絡を取って既存TASを更新しようとしたもののうまくいかず、結局古いTASを流すことになりました。

あと最強羽生将棋とテンミリオンの練習時間がなくなって本番ひどいことになりました。

次は無理のないスケジュールを心掛けたいですね。

終わりに

別に私自身は大したことはやっていないのですが、TASbotを国内で披露できたのは良かったと思います。

再び国内でTASが盛り上がるきっかけになれば幸いです。

お声掛けいただければTASを流しますので、お気軽にどうぞ。