将棋AIの王手ラッシュは本当に水平線効果なのか?
AIに興味のある将棋ファンの方なら、「水平線効果」、または「地平線効果」という言葉という言葉を聞いたことがあるかと思います。
古い将棋AIの駒のただ捨ての原因として知られていたり、AIはこれが原因で一度不利になるとジリ貧になって負けるだなんていわれていたり、AIの最後の王手ラッシュの原因だなんだといわれていたりします。
また、水平線効果の克服については、90年代の将棋ソフト*1が「水平線効果の克服」を謳ったかと思えば、現代の将棋AIですら水平線効果からは逃れられないという話もあります。
結論からいうと、
・AIの最後の王手ラッシュの原因が水平線効果なのかどうかはケースバイケース。
・製品のキャッチコピーとして使われた「水平線効果の克服」は、水平線効果が見えづらくなっているだけで解決はされていない。
ということがいえると思います。
では、詳しく見ていきましょう。
結局水平線効果ってなに?
AIが避けることができない嫌なできごとを引き伸ばして読みの範囲外まで押しやり、「なかったこと」にしてしまうことを言います。当然本当になかったことになるわけではないので、最後にはただただ損をしてしまうことになります。
例えば5手先まで読めるAIがあったとします。ちょうど4手先に飛車を取られる手が見えたとき、持ち駒を捨てて王手をかけることができれば、王手をかける手+その対応に1手使わせることで飛車を取られる手を2手引き伸ばすことができます。
しかし、そのように引き伸ばしても、次に手番が回ってきたときには飛車を取られる手は5手以内、つまり読める範囲に入ってきてしまいます。こうなるとまた引き伸ばすために持ち駒を捨てる手を繰り返し、本来なら飛車1枚の損失で済んだはずが、飛車と持ち駒すべてを失ってしまうことになります。
こうした事情から、昔のコンピュータ将棋の場合、自玉がどうやっても助からないときには無駄な王手をかけて大暴れしてくることが一種の名物になっていました。
こうした事象を、水平線や地平線の向こうまで物を移動させると見えなくなることにたとえてこのように呼ばれています。
よくありがちな誤解ですが、水平線効果は別に不利な局面以外でも発生します。有利な局面であろうが、例えば飛車を取られる手は嫌なので、先延ばししようとして持ち駒をすべて失ってしまうということはままあります。
現代のコンピュータ将棋の王手ラッシュの原因は本当に水平線効果か?
昔のコンピュータ将棋の王手ラッシュが水平線効果だということはわかりました。ところが、現代のコンピュータ将棋の棋譜を見ても最後は無駄に見える王手ラッシュで終わります。これは水平線効果なのでしょうか?
現代のコンピュータ将棋の王手ラッシュ時の評価値を見ると、ほとんどの場合既に読みきった値を出しています。つまり、王手ラッシュをしている間も、水平線のこちら側、読みの範囲内に詰みがあるのです。ということは、どうやら詰みを水平線の向こう側に追いやってしまっている訳ではなさそうです。
それではなぜ王手ラッシュをしているのでしょうか?「見えないところまで追いやろうとしている」のではなく、プログラム上で定義された「負けるときは最長手数にせよ」という目的に忠実に従っているだけなのです。では、なぜそんな作りになっているのでしょうか。
それは、将棋では負けが決まっている局面での最善手の定義が難しいためです。
一般に「相手がもっとも間違えやすい手」を指すのがよいのですが、それをどう定義すればいいのかははっきりしません。なんならプレイヤーによって得手不得手があるので、厳密にいえば相手の棋力や棋風を加味して手を決定する必要が生じます。
もっとも簡単に実装するなら、負けを読みきったら適当な手を指すことですが、それよりは最長にしたほうがいくぶんか相手が間違えてくれそうです。
当然、コンピュータに形作りや勝負手をさせる研究は行われてきました*2が、棋力に直結しないため多くの場合後回しにされがちなのです。
余談ですが、市販の金沢将棋は最後王手ラッシュを仕掛けてきた後諦めたような手を指します。「市販ならもうちょっと終局をきれいにしろ」といわれますが、これは経緯を見ると意図が見えてきます。一時期、金沢将棋シリーズはきれいな局面で投了するようになっていました。しかし、これらの製品のレビューを見ると、「なぜ投了されたのかがわからない」「最後まで指してほしい」というような意見が散見されます。その後、新製品では再び王手ラッシュを仕掛けるようになりました。
棋力の高いプレイヤーは美しい引き際を求めますが、単純にその声に応えても練習相手として将棋ソフトを求めている初心者には不親切になってしまうことがあるようです。
東大将棋の売り文句「水平線効果の克服」とは何だったのか
これはおそらく「劣等局面枝刈り」のことです。仕組み自体はシンプルで、盤面が同一で持ち駒だけが減っている局面は劣等局面とみなしてそれ以上読まないという仕組みです。これは現代にも引き継がれる画期的な技術でした。
しかし、これで解決できるのは、「水平線効果」によって引き起こされる一部の事象、駒捨てのみです。
このコピーはさすがに誇大広告と言わざるを得ません。
他の水平線効果の緩和技術
未だにトップ層の棋力を持つソフトでは、水平線効果を完全に排除することはできません。
駒を捨ててしまうような現象であれば、静止探索という手法で緩和可能です。評価関数で評価するのが難しいような激しい変化を含む局面で探索が打ちきられた場合、評価を誤りがちです。ならば、とりあえず落ち着いた局面まで進めてから盤面の評価を行おうという手法です。
また、単純に評価関数の精度が高くなることでも緩和できます。単に嫌な事象が引き伸ばされただけで根本的な対処になっていない、むしろ悪化しているということが評価関数で表現できれば引き伸ばすだけの悪手を抑止できます。
まとめ
- 昔よく見た水平線効果による王手ラッシュと今のソフトの王手ラッシュは意味が異なる場合が多い。
- 水平線効果そのものは解決されていないが、様々な工夫や評価関数の精度向上により緩和されている。
本当に棋力認定が受けられた森田将棋64の棋力試験をウォーズ初段が受けるとどうなるのか?
かつて、日本将棋連盟公式の段位認定が受けられたゲームがあります。
80〜90年代を代表する将棋ソフトである森田将棋シリーズの一部の作品には、棋力認定機能がついていました。*1
つまり、このゲームの棋力認定は、ある程度当時の棋力の基準を反映したものであると考えられます。
ところで、現在最大手の将棋対局サイトである将棋ウォーズの段位が甘く、ここの初段は本当の初段じゃないなんて話をきいたことがあります。
私は将棋ウォーズ世代なのでよくわかりませんが、せっかくなので森田将棋64で初段を取れるかを試してみましょう。
試験内容
1局ごとに持ち時間が短くなる対局5局が終わったら、対局の成績に応じて初級から上級コースまでを選択でき、次の一手問題20問を解く流れです。
免状申請のためのパスワードが表示される次の一手問題は一度のみ受けられます。(パスワードがなくていいなら何度でも受けられます。)
対局
かなり楽に5勝しました。
一番短い持ち時間だと10分30秒ですが、将棋ウォーズに慣れているせいで別に焦ったりはありませんでした。
次の一手問題
20問中19問正解でした。
比較的簡単な問題が多いです。しかも問題の一部は三択です。
結果
三段でした。多分この難易度だと当時でも相当温そうな気がします。
同じ64の最強羽生将棋の棋力認定があるので、次回こちらも受けてみて比較してみようかと思います。
*1:当時の将棋連盟のいい収入源でもあったそうです。
N64の最強羽生将棋で全駒してみよう!
〜全駒とは〜
将棋において相手の駒をすべて取る行為。
一般に対人でやったらかなりマナーが悪いとされる。
みなさんは全駒をしたことがあるでしょうか。
対人ではあまり好ましくないとされる全駒ですが、コンピュータ相手ならやっても怒られることはたぶんありません。
今回はどうしても全駒をしたくなったときのために、最強羽生将棋相手に全駒をするコツをお伝えします。
用意するもの
最強羽生将棋…1本
NINTENDO64…1台
コンポジット入力またはS端子入力に対応したモニター又はテレビ…1台
対象とするレベルのコンピュータに安全勝ちが狙える棋力(レベル1を対象とする場合で将棋ウォーズの2級程度?)
気をつけること・コツ
基本的にはコンピュータの駒を少しずつ取っていくのですが、ひとつ大きな落とし穴があります。
将棋というゲームの終了条件は自ら負けを認める行為、投了だということです。
つまり、こちらがすべての駒を取り切る前に、相手が自発的に投了してくると全駒は失敗するということです。
最強羽生将棋を相手にした全駒とは、相手にいかに負けを認めさせないかというゲームに他ならないのです。
持ち時間の設定に気をつけろ!
投了を避けるためには、まず最強羽生将棋のコンピュータの投了条件を知る必要があります。
最強羽生将棋では、持ち時間が逼迫している場合と十分にある場合でコンピュータの投了条件が異なります。
持ち時間が十分にある場合には、負けを完全に読み切るまでは投了しません。しかし、持ち時間が逼迫している場合には比較的かんたんに投了するのです。
つまり、投了を避けるためには、相手にふんだんに持ち時間を与えるのがベストです。
できるなら時間無制限で対局をおこないましょう。
とはいえ、時間無制限でも油断は禁物です。最強羽生将棋の終盤力は比較的高く、通常対局で選択できる最低レベルであるレベル1よりも低い、「レベル0」や「初心者レベル」ですら5手詰くらいは余裕で読み切ってきます。
なーにが初心者じゃ。
500手制限にご注意を!
2019年からプロの棋戦に採用された500手引き分けルールですが、なぜか1996年のこのゲームに実装されています。*1
500手に到達しないように気をつけましょう。
優位に立ったら受けに回れ!
ある程度優位に立ったら、もう積極的に攻める必要はありません。
この当時のコンピュータは不利になると「水平線効果」とよばれる現象が顕在化し、悪い変化を見えない水平線の先へ追いやるようにただただ先延ばしするような無駄な駒捨てを繰り返すようになります。*2
なので、明確に差がついたら自陣に引きこもっているだけで駒を献上してくれることが多いのです。
とはいえ先述の500手制限との兼ね合いである程度せっついて攻めを誘うことは必要ですが。
自分の持ち駒に要注意!
普通に全駒をしようとすると、どんどん自分の駒台に駒が増えてきます。
しかし、これは危険なサイン。
邪魔な駒はバンバン自陣に打ち付けてしまいましょう。
具体例を次の一手問題形式で見てみましょう。
以下の図はいかにも8七のと金を取ってしまいたいところですが……?

正解は▲9九玉。

持駒が多すぎるのでここでと金を取ると相手が投了してしまいます。
玉を引いて金を献上しましょう。
駒を渡すのは痛いですが、持駒一つで相手の選択肢がぐっと増えるので投了されにくくなります。
ちなみにこの記事ではあとから振り返って理屈づけて説明していますが、この局面では突然「取ると投了される」と凄まじい恐怖を覚えました。この局面はまだわかりやすいですが、対局中他にも何度か同様に第六感のようなものが働きました。
これは筆者が10年以上最強羽生将棋をプレイして身についた感覚なのかもしれません。どうしても全駒ができなかったら、まずは10年ほど遊んでみてくださいね。
大駒は閉じ込めろ!
通常、将棋は大駒を活用するゲームです。
しかし、大駒というのは遠方からでも詰みにも役立ってしまうので、投了されないようにするには邪魔です。
十分に優位に立ったらあとは閉じ込めてしまって、働けないようにしてしまいましょう。

終わりに
これで全駒のコツは伝わりましたでしょうか。ぜひ皆様も試してみてくださいね。
なお、筆者は今回最強羽生将棋のレベル5相手に試したところ、普通に相手の思考時間だけで2時間かかったので二度としません。
以上、よろしくお願いいたします。
棋譜
手合割:平手
後手:最強羽生将棋L5
▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲7七銀 △6二銀
▲5六歩 △5四歩 ▲6六歩 △4二銀 ▲7八金 △3二金
▲1六歩 △4一玉 ▲4八銀 △5二金 ▲5八金 △3三銀
▲6九玉 △3一角 ▲6七金右 △4四歩 ▲7九角 △4三金右
▲6八角 △4二角 ▲7九玉 △3一玉 ▲8八玉 △7四歩
▲2六歩 △8五歩 ▲3六歩 △2二玉 ▲3七銀 △9四歩
▲2五歩 △9五歩 ▲2六銀 △1四歩 ▲1五歩 △同 歩
▲同 銀 △同 香 ▲同 香 △1三歩 ▲1八飛 △1二銀
▲1六香 △2四歩 ▲同 歩 △7三桂 ▲3七桂 △8三飛
▲2五桂 △2四銀 ▲1三桂成 △同 桂 ▲同 香成 △同 銀上
▲同 香成 △3一玉 ▲1四成香 △1七歩 ▲同 飛 △1二香
▲1三歩 △同 香 ▲同 成香 △4一玉 ▲2三成香 △同 金
▲1二飛成 △2二歩 ▲2九香 △2五香 ▲同 香 △同 銀
▲2一龍 △3一香 ▲3二銀 △5二玉 ▲2三銀成 △同 歩
▲1三角成 △3二銀 ▲1一龍 △2一桂 ▲6八馬 △2四角
▲5八馬 △9六歩 ▲同 歩 △3六銀 ▲2二歩 △9八歩
▲同 香 △7五歩 ▲同 歩 △8六歩 ▲同 銀 △3三角
▲4六歩 △3七銀不成▲4七馬 △2八銀成 ▲3七馬 △3九成銀
▲4八馬 △9六香 ▲同 香 △8五歩 ▲7七銀 △2九成銀
▲3八馬 △1九成銀 ▲1二龍 △8六歩 ▲同 銀 △1三桂
▲同 龍 △2四角 ▲1九龍 △4六角 ▲1一龍 △4二玉
▲2一歩成 △8五歩 ▲7七銀 △8六歩 ▲同 銀 △8一飛
▲4七歩 △6四角 ▲2二と △5一飛 ▲7四歩 △8六角
▲同 歩 △6九銀 ▲6八金寄 △3三金 ▲1四歩 △4三銀
▲1三歩成 △8一飛 ▲7六金 △4一飛 ▲2三と寄 △同 金
▲同 と △7五歩 ▲同 金 △5二玉 ▲3七馬 △3二香
▲1二龍 △8一飛 ▲7六金 △3五歩 ▲3二と △7八銀成
▲同 金 △6四歩 ▲7七金打 △8五桂 ▲同 歩 △6三玉
▲5九馬 △5五歩 ▲同 歩 △5一飛 ▲5六金 △3四銀
▲4六歩 △4五歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲同 金 △8七歩
▲同 玉 △5五飛 ▲同 金 △8六歩 ▲9八玉 △8七歩成
▲9九玉 △7七と ▲同 金引 △7二玉 ▲9五歩 △8二金
▲7九飛 △8三金 ▲8八角 △7四金 ▲8六銀 △7三金
▲2二香 △8四歩 ▲同 歩 △同 金 ▲8五歩 △8三金
▲6四金 △9八歩 ▲同 玉 △3六歩 ▲2三香 △7三金
▲6五金 △3七歩成 ▲同 馬 △8三金 ▲2一銀 △6一玉
▲8七銀 △7三金 ▲1三桂 △7二金 ▲1四桂 △6三金
▲4六歩 △5三銀 ▲3六歩 △7二玉 ▲3三と △6四銀
▲4三と △6五銀 ▲同 歩 △6二金 ▲5四歩 △6三金打
▲5九香 △7三金上 ▲7六銀打 △6二金 ▲5三歩成 △6一金
▲5二と右 △同 金 ▲同 と △5一歩 ▲同 と △8三玉
▲5四歩 △7二玉 ▲5三歩成 △8三金 ▲5四と △8一玉
▲4一と △8二金 ▲6四歩 △7二玉 ▲6三歩成 △8一玉
▲1一金 △8三金 ▲9九桂 △8二玉 ▲6四と寄 △9一玉
▲7三と寄 △8二金 ▲同 と △同 玉 ▲5八歩 △8三玉
▲9七金 △8二玉 ▲6八歩 △9二玉 ▲7五銀左 △8二玉
▲8六金左 △9二玉 ▲7四歩 △7二歩 ▲6三と △8一玉
▲5一と △7一玉 ▲5二と引 △8一玉 ▲6二と寄 △9二玉
▲7二と寄
まで289手で先手の勝ち
向上心0な人の間に合わせ雑英会話術:電子辞書を買おう!
英語圏にホームステイしたときに、語彙が壊滅的でも電子辞書のおかげで割と会話できたので共有します。
ちなみに私は中学からExword一筋で、搭載されていた英和・和英辞典はジーニアス英和・和英辞典です。
スマホ+無料の辞書サイトと比べた場合の優位性
オフラインなので応答がはやい
対面での会話では応答速度はコンマ数秒でも短いほうがありがたいです。一般に電子辞書はオフラインなので、オンラインよりも迅速に回答できます。
特に聞いた知らん単語を調べるときなんてそれっぽいスペルを何通りもうちこんで調べる必要があるので、オフラインじゃないともたついてなかなか目的の単語にたどり着くことができません。
なんか読みやすい
辞書以外の情報が表示されないためなのか、ジーニアス英和・和英辞典のほうがなんか情報が迅速に頭に入ってきます。
なんでかは知らないので個人差があるかもしれません。
相手に見せるときに事故らない
こっちの発音が伝わらないときは画面を見せる必要がありますが、スマホと違って個人情報が入っていないので、見せるときにうっかり変なところ触っても安心です。
終わりに
ジーニアス英和・和英辞典最高!!!!!
N64最強羽生将棋 攻略本の最短手順を26年越しに更新しました
N64用ゲームソフト「最強羽生将棋」の攻略本「「最強羽生将棋」完全攻略活用ブック―佐島家の野望」。
1997年2月に発売されたこの本は指導棋士の小田切先生により執筆されたガチな本で、掲載された同ゲームのコンピュータレベル1の最短手順は、私が知る限り今年に至るまで更新されていないはずです。
しかし、10年以上に渡る研究の末、ついにこの手順の更新に成功いたしましたので掲載いたします。
レベル1 最短手順
攻略本:21手→本手順:19手
後手:レベル1
▲3六歩 △3四歩 ▲3七桂 △3二金 ▲2九飛 △6二銀
▲6六歩 △同角 ▲7六歩 △5七角成 ▲1一角成 △2二銀
▲2一馬 △4一玉 ▲3五桂打 △4七馬 ▲4三桂成 △3一金
▲同馬
まで19手で先手の勝ち
解説
後手:最強羽生将棋 レベル1
▲3六歩 △3四歩 ▲3七桂 △3二金 ▲2九飛 △6二銀

** △6二銀が壁となり玉の逃げ道が狭くなった瞬間に相手の攻めを誘導しこの形から発展させないことは、対最強羽生将棋における一つのセオリー。先手の桂馬、飛車の位置は後々攻め込ませた際に相手の指し手を誘導するための準備。
▲6六歩 △同角 ▲7六歩 △5七角成

** △4四歩パックマン戦法の変形。レベル2以上では▲6六歩で△5七角成に代えて△8八角成としてきて不成立だが、レベル1に限ってはここで角交換を避けてくるため成立する。
▲1一角成 △2二銀 ▲2一馬 △4一玉
** このような攻めに対して最強羽生将棋の低レベル帯のコンピュータは玉を寄せて利きを足そうとしてくることが多いが、多くの場合逆用することができる。
▲3五桂
** 2一の馬と連携して4三の地点を露骨に狙う手。
△4七馬

** 本来3五の桂を取っておしまいだが、本譜の△4七馬が飛車取りになっているため一見味が良く釣られてしまう。
▲4三桂成 △3一金
** 同金としておけばまだ粘れたが、飛車取りとなっている先手陣にも目移りする局面なこともあり読めていない。
▲同馬
まで19手で先手の勝ち
どうやってこの手順を発見したのか
私は最強羽生将棋のRTA走者であり、チャート研究のために自動的に手順を研究するツールを開発しています。
しかし、今回の手順はシンプルに私が手作業で発見したものです。
とはいえ、ツールが出力した様々な手順を見て弱点の傾向を掴んでいたからこそ発見できた手順であり、完全な人力かといえば疑問符がつきます。小田切先生がこのような補助なしに21手の攻略本手順を考案されたという事実には驚くばかりです。
他のレベルの短手数
レベル1以外については今年はじめて攻略本手順を更新できたわけではありませんが、おまけとして掲載します。
レベル3
35手→23手
後手:最強羽生将棋 レベル3
▲7六歩 △3四歩 ▲1六歩 △4四歩 ▲7七角 △3二飛
▲7八飛 △6二玉 ▲7五歩 △7二玉 ▲9五角 △4五歩
▲7七桂 △4二銀 ▲7四歩 △9四歩 ▲7三歩成 △同桂
▲6五桂 △9五歩 ▲7三飛成 △8一玉 ▲8三龍
まで23手で先手の勝ち
レベル5
31手→23手
後手:最強羽生将棋 レベル5
▲4六歩 △8四歩 ▲4五歩 △8五歩 ▲4四歩 △8六歩
▲4三歩成 △8七歩成 ▲5三と △8八と ▲同 銀 △7二金
▲8六歩 △同 飛 ▲4八飛 △4七歩 ▲同 飛 △5八歩
▲同 金左 △6八角 ▲同 金 △3二金 ▲6一角
まで23手で先手の勝ち
研究レベル
攻略本未掲載→29手
後手:最強羽生将棋 研究レベル
▲4六歩 △8四歩 ▲4五歩 △8五歩 ▲4四歩 △8六歩
▲4三歩成 △8七歩成 ▲5三と △8八と ▲同銀 △7二金
▲4八飛 △5八歩 ▲同金左 △6五角 ▲4七金 △8八飛成
▲同飛 △4七角成 ▲5八金 △2九馬 ▲8一飛成 △4七桂
▲6九玉 △5九金 ▲7九玉 △7八銀 ▲同玉
まで29手で先手の勝ち
先手:最強羽生将棋 研究レベル
▲2六歩 △4二飛 ▲6八玉 △9四歩 ▲7八玉 △9五歩
▲6八銀 △3四歩 ▲4八銀 △8四歩 ▲5八金右 △7二飛
▲7九角 △5二玉 ▲8八玉 △6二銀 ▲7八金 △9三桂
▲9六歩 △同 歩 ▲同 香 △5一金左 ▲9四歩 △8五桂
▲9三歩成 △7一飛 ▲8二と △9六香 ▲7一と △9五香
まで30手で後手の勝ち
ドン・キホーテNANOTE(初代)にCachyOSを入れたよ
初代NANOTEにCachyOS入れてみたので備忘録がてら。
CachyOSってなんぞや
速さに重点をおいたArch Linux系のディストリビューションらしいです。
使ってみた感想
Kubuntuからの乗り換えです。今回はKDE+systemd-bootで使用。
速い
このPCではWindowsよりKubuntuのほうがかなり快適だったのですが、CachyOSは更に快適です。
具体的には起動がKubuntuより倍くらい速く、体感では各種アプリケーションの操作時のもたつきもなくなったように思います。
NANOTEではAVX2等の拡張命令が使えないのでCachyOSのポテンシャルは発揮しきれていないはずなのですが、それでこれとは末恐ろしいです。
インストールが簡単
Arch系ははじめてなので身構えていましたが、比較的簡単でした。設定についてもArch Wikiがあまりにも強い。
NANOTEはタッチやサウンド、ポインティングデバイス周りにクセがある機種なのですが、ほとんどがあっさり動いたので拍子抜けしました。
とはいえ日本語設定等は自分で行う必要がありますので、Windowsからの移行ではじめてのLinuxという方にはおすすめできません。
Linux普段遣いしたことあるよって人なら困ることはないと思います。
インストール・初期設定時に詰まった点
インストール時のエラー
オンラインインストーラーでエラーが出たので以下フォーラムを参考にしたらなんとかなりました。
Installation Failed with pacstrap error - #6 by BONK - EndeavourOS installation - EndeavourOS
バックライトの調整
GPD Pocketの手順がそのまま使えました。
最強羽生将棋の門下生大会は、駒をとられずどこまで進めるのか その1
前書き
最強羽生将棋のSUPRE人生プレイという縛りプレイが存在する。
これは何年も昔にマリオ64のSUPER人生プレイという縛りをベースにしてあるプレイヤーによって考案されたものであり、駒をとられずにゲーム中の門下生大会モードをどこまで進めることができるかという挑戦である。考案者自身も実際この縛りでクリアできるとは思っていなかったようで、彼自身一人たりとも勝利することができていなかった。
この記事は、その馬鹿げた挑戦が実現化のうなのかどうかを真面目に検討するものである。
将棋の人生プレイは何が難しいのか
将棋において駒をとられないというのはどれほど難しいことなのだろう。
まず、将棋やチェスのような駒の取り合いを前提としたゲームシステムで駒を一切とられないようにするなどということは、相手より圧倒的に強くないとできないということはご想像のとおりである。
さらにいえば、将棋は駒の再利用が可能な特性上、チェスなどの同種のゲームよりも駒の取り合いが激しい。「開戦は歩の突き捨てから」という格言があるほどに、将棋とは序盤から終盤まで駒を捨ててより大きな利益を得ることが基本戦略である。
こうした特性上、トップクラスのプロ棋士が基本ルールしかわからない素人を相手にするといった条件であっても、この縛りで勝つことは不可能である。
では、最強羽生将棋においてもこの縛りは絶望的なのだろうか。
唯一の希望は、「コンピュータはプレイヤーがこのような縛りの元でプレイしていることを知ることができない」ということである。
「相手は駒をとられてはいけない」という条件が分かっていれば、価値の高い駒と低い駒であろうと刺し違えてしまえば終わりである。しかし、「相手が普通に指している」と思い込んでいる限りは、このような損な取引を持ちかけてくることはまずないであろう。
これを利用できるならば──。
門下生1人目、関根剛三
棋譜
手合割:二枚落ち
上手:関根剛三
△6二銀 ▲7六歩 △5四歩 ▲7五歩 △3二金 ▲7八飛
△5二金 ▲7六飛 △4二銀 ▲6六角 △4一玉 ▲8六飛
△8四歩 ▲同 飛 △3一玉 ▲8一飛成 △2二玉 ▲9一龍
△5一銀右 ▲9三龍 △6二銀 ▲9一龍 △5一銀右 ▲8二龍
△6四歩 ▲7三龍 △5三金 ▲7四歩 △6五歩 ▲9三角成
△5二銀 ▲7一龍 △3四歩 ▲7三歩成 △6六歩 ▲同 馬
△4四歩 ▲7四歩 △4三金寄 ▲6二と △5三銀直 ▲6三と
△1四歩 ▲7三歩成 △1五歩 ▲1八香打 △2四歩 ▲7四歩
△3三銀 ▲5二と △6四銀 ▲6三と △5五銀 ▲6五馬
△2五歩 ▲7三歩成 △5六銀 ▲同 馬 △5五歩 ▲同 馬
△5四金 ▲同 馬 △4三金 ▲同 馬 △2三玉 ▲2一龍
まで66手で下手の勝ち
解説
1人目の門下生である関根剛三とは二枚落ち下手での対局となる。
図1:△6二銀 ▲7六歩 △5四歩 ▲7五歩 △3二金 ▲7八飛

駒を取られてはいけないということは、歩の交換すら許されないということである。なので、できる限り歩を敵陣に近づけたくはない。そこで、一つの筋の歩のみを動かして角と飛車の活用を図ることができる三間飛車の出番である。
図2:△5二金 ▲7六飛 △4二銀 ▲6六角 △4一玉 ▲8六飛

最強羽生将棋のコンピュータには駒落ち専用のロジックが入っていない。そのため、平手と同じような駒組を行ってしまう。しかも、関根は最初の門下生、つまり最弱に設定されている。
そのため、単純に飛車を横に展開するこのような単純な攻めにすら対応することが出来ない。
あとは飛車を成り込み、細心の注意を払いながら駒を回収していく。
図3:△8四歩 ▲同 飛 △3一玉 ▲8一飛成 △2二玉 ▲9一龍
△5一銀右 ▲9三龍 △6二銀 ▲9一龍 △5一銀右 ▲8二龍
△6四歩 ▲7三龍 △5三金 ▲7四歩 △6五歩 ▲9三角成
△5二銀 ▲7一龍 △3四歩 ▲7三歩成 △6六歩 ▲同 馬
△4四歩 ▲7四歩 △4三金寄 ▲6二と △5三銀直 ▲6三と
△1四歩 ▲7三歩成 △1五歩 ▲1八香打

最大限警戒すべきはこの端歩である。不利なときに香車という強力な駒がいる端に活路を見出すのは人間もコンピュータも同じである。普通ならたいしたことのないこんな端攻めすらも、このルールでは強引に歩をもぎ取りにこられる非常に厄介な攻めである。
そこで、端を攻めてもいいことはないぞ、と関根に言い聞かせるように強引に香車を打ち付けて戦意を喪失させる。
あとはひたすらと金を作り続けて包囲し、相手に無意味な捨て駒を誘発させる。
ここで注意したいのは、絶対に相手から駒を捨てるように仕向けることである。大量のと金で相手の駒をはがすのは普通の将棋なら勝ちパターンだが、今回はと金の一枚ですら相手に与えるわけにはいかない。
端を補強したとはいえここまで破れかぶれになった相手がいつ端を絡めてくるともわからないので、正直に言えばこの時点でも一切油断はできなかった。
図4:△2四歩 ▲7四歩
△3三銀 ▲5二と △6四銀 ▲6三と △5五銀 ▲6五馬
△2五歩 ▲7三歩成 △5六銀 ▲同 馬 △5五歩 ▲同 馬
△5四金 ▲同 馬 △4三金 ▲同 馬 △2三玉 ▲2一龍
まで66手で下手の勝ち

今回はなんとか勝利を収めることができた。
次の相手とは角落ちでの対局となるが、大駒はこのルールではあまりにも大きい。このゲームの最弱設定のコンピュータはたまに雑に大駒を捨てることで弱さを実現するような調整になっている。
また、飛車落ちでは今回ついた8筋の隙が存在しない。非常に厳しい戦いになるであろう。
次回、野元広治編。
なお、次回がなければ私では勝てなかったということである。