N64の最強羽生将棋で全駒してみよう!

〜全駒とは〜

将棋において相手の駒をすべて取る行為。

一般に対人でやったらかなりマナーが悪いとされる。


 

みなさんは全駒をしたことがあるでしょうか。

対人ではあまり好ましくないとされる全駒ですが、コンピュータ相手ならやっても怒られることはたぶんありません。

今回はどうしても全駒をしたくなったときのために、最強羽生将棋相手に全駒をするコツをお伝えします。

用意するもの

最強羽生将棋…1本

NINTENDO64…1台

コンポジット入力またはS端子入力に対応したモニター又はテレビ…1台

対象とするレベルのコンピュータに安全勝ちが狙える棋力(レベル1を対象とする場合で将棋ウォーズの2級程度?)

気をつけること・コツ

基本的にはコンピュータの駒を少しずつ取っていくのですが、ひとつ大きな落とし穴があります。

将棋というゲームの終了条件は自ら負けを認める行為、投了だということです。

つまり、こちらがすべての駒を取り切る前に、相手が自発的に投了してくると全駒は失敗するということです。

最強羽生将棋を相手にした全駒とは、相手にいかに負けを認めさせないかというゲームに他ならないのです。

 

持ち時間の設定に気をつけろ!

投了を避けるためには、まず最強羽生将棋のコンピュータの投了条件を知る必要があります。

最強羽生将棋では、持ち時間が逼迫している場合と十分にある場合でコンピュータの投了条件が異なります。

持ち時間が十分にある場合には、負けを完全に読み切るまでは投了しません。しかし、持ち時間が逼迫している場合には比較的かんたんに投了するのです

 

つまり、投了を避けるためには、相手にふんだんに持ち時間を与えるのがベストです。

できるなら時間無制限で対局をおこないましょう。

 

とはいえ、時間無制限でも油断は禁物です。最強羽生将棋の終盤力は比較的高く、通常対局で選択できる最低レベルであるレベル1よりも低い、「レベル0」や「初心者レベル」ですら5手詰くらいは余裕で読み切ってきます。

なーにが初心者じゃ。

500手制限にご注意を!

2019年からプロの棋戦に採用された500手引き分けルールですが、なぜか1996年のこのゲームに実装されています。*1

500手に到達しないように気をつけましょう。

優位に立ったら受けに回れ!

ある程度優位に立ったら、もう積極的に攻める必要はありません。

この当時のコンピュータは不利になると「水平線効果」とよばれる現象が顕在化し、悪い変化を見えない水平線の先へ追いやるようにただただ先延ばしするような無駄な駒捨てを繰り返すようになります。*2

なので、明確に差がついたら自陣に引きこもっているだけで駒を献上してくれることが多いのです。

 

とはいえ先述の500手制限との兼ね合いである程度せっついて攻めを誘うことは必要ですが。

自分の持ち駒に要注意!

普通に全駒をしようとすると、どんどん自分の駒台に駒が増えてきます。

しかし、これは危険なサイン。

 

邪魔な駒はバンバン自陣に打ち付けてしまいましょう。

 

具体例を次の一手問題形式で見てみましょう。

以下の図はいかにも8七のと金を取ってしまいたいところですが……?

正解は▲9九玉。

持駒が多すぎるのでここでと金を取ると相手が投了してしまいます。

玉を引いて金を献上しましょう。

駒を渡すのは痛いですが、持駒一つで相手の選択肢がぐっと増えるので投了されにくくなります。

 

ちなみにこの記事ではあとから振り返って理屈づけて説明していますが、この局面では突然「取ると投了される」と凄まじい恐怖を覚えました。この局面はまだわかりやすいですが、対局中他にも何度か同様に第六感のようなものが働きました。

これは筆者が10年以上最強羽生将棋をプレイして身についた感覚なのかもしれません。どうしても全駒ができなかったら、まずは10年ほど遊んでみてくださいね。

大駒は閉じ込めろ!

通常、将棋は大駒を活用するゲームです。

しかし、大駒というのは遠方からでも詰みにも役立ってしまうので、投了されないようにするには邪魔です。

十分に優位に立ったらあとは閉じ込めてしまって、働けないようにしてしまいましょう。

投了図。玉を睨む大駒や香車の利きを他の駒で遮断している。

終わりに

これで全駒のコツは伝わりましたでしょうか。ぜひ皆様も試してみてくださいね。

なお、筆者は今回最強羽生将棋のレベル5相手に試したところ、普通に相手の思考時間だけで2時間かかったので二度としません。

以上、よろしくお願いいたします。

 

棋譜

手合割:平手

後手:最強羽生将棋L5

▲7六歩    △8四歩    ▲6八銀    △3四歩    ▲7七銀    △6二銀
▲5六歩    △5四歩    ▲6六歩    △4二銀    ▲7八金    △3二金
▲1六歩    △4一玉    ▲4八銀    △5二金    ▲5八金    △3三銀
▲6九玉    △3一角    ▲6七金右  △4四歩    ▲7九角    △4三金右
▲6八角    △4二角    ▲7九玉    △3一玉    ▲8八玉    △7四歩
▲2六歩    △8五歩    ▲3六歩    △2二玉    ▲3七銀    △9四歩
▲2五歩    △9五歩    ▲2六銀    △1四歩    ▲1五歩    △同 歩
▲同 銀    △同 香    ▲同 香    △1三歩    ▲1八飛    △1二銀
▲1六香    △2四歩    ▲同 歩    △7三桂    ▲3七桂    △8三飛
▲2五桂    △2四銀    ▲1三桂成  △同 桂    ▲同 香成  △同 銀上
▲同 香成  △3一玉    ▲1四成香  △1七歩    ▲同 飛    △1二香
▲1三歩    △同 香    ▲同 成香  △4一玉    ▲2三成香  △同 金
▲1二飛成  △2二歩    ▲2九香    △2五香    ▲同 香    △同 銀
▲2一龍    △3一香    ▲3二銀    △5二玉    ▲2三銀成  △同 歩
▲1三角成  △3二銀    ▲1一龍    △2一桂    ▲6八馬    △2四角
▲5八馬    △9六歩    ▲同 歩    △3六銀    ▲2二歩    △9八歩
▲同 香    △7五歩    ▲同 歩    △8六歩    ▲同 銀    △3三角
▲4六歩    △3七銀不成▲4七馬    △2八銀成  ▲3七馬    △3九成銀
▲4八馬    △9六香    ▲同 香    △8五歩    ▲7七銀    △2九成銀
▲3八馬    △1九成銀  ▲1二龍    △8六歩    ▲同 銀    △1三桂
▲同 龍    △2四角    ▲1九龍    △4六角    ▲1一龍    △4二玉
▲2一歩成  △8五歩    ▲7七銀    △8六歩    ▲同 銀    △8一飛
▲4七歩    △6四角    ▲2二と    △5一飛    ▲7四歩    △8六角
▲同 歩    △6九銀    ▲6八金寄  △3三金    ▲1四歩    △4三銀
▲1三歩成  △8一飛    ▲7六金    △4一飛    ▲2三と寄  △同 金
▲同 と    △7五歩    ▲同 金    △5二玉    ▲3七馬    △3二香
▲1二龍    △8一飛    ▲7六金    △3五歩    ▲3二と    △7八銀成
▲同 金    △6四歩    ▲7七金打  △8五桂    ▲同 歩    △6三玉
▲5九馬    △5五歩    ▲同 歩    △5一飛    ▲5六金    △3四銀
▲4六歩    △4五歩    ▲同 歩    △同 銀    ▲同 金    △8七歩
▲同 玉    △5五飛    ▲同 金    △8六歩    ▲9八玉    △8七歩成
▲9九玉    △7七と    ▲同 金引  △7二玉    ▲9五歩    △8二金
▲7九飛    △8三金    ▲8八角    △7四金    ▲8六銀    △7三金
▲2二香    △8四歩    ▲同 歩    △同 金    ▲8五歩    △8三金
▲6四金    △9八歩    ▲同 玉    △3六歩    ▲2三香    △7三金
▲6五金    △3七歩成  ▲同 馬    △8三金    ▲2一銀    △6一玉
▲8七銀    △7三金    ▲1三桂    △7二金    ▲1四桂    △6三金
▲4六歩    △5三銀    ▲3六歩    △7二玉    ▲3三と    △6四銀
▲4三と    △6五銀    ▲同 歩    △6二金    ▲5四歩    △6三金打
▲5九香    △7三金上  ▲7六銀打  △6二金    ▲5三歩成  △6一金
▲5二と右  △同 金    ▲同 と    △5一歩    ▲同 と    △8三玉
▲5四歩    △7二玉    ▲5三歩成  △8三金    ▲5四と    △8一玉
▲4一と    △8二金    ▲6四歩    △7二玉    ▲6三歩成  △8一玉
▲1一金    △8三金    ▲9九桂    △8二玉    ▲6四と寄  △9一玉
▲7三と寄  △8二金    ▲同 と    △同 玉    ▲5八歩    △8三玉
▲9七金    △8二玉    ▲6八歩    △9二玉    ▲7五銀左  △8二玉
▲8六金左  △9二玉    ▲7四歩    △7二歩    ▲6三と    △8一玉
▲5一と    △7一玉    ▲5二と引  △8一玉    ▲6二と寄  △9二玉
▲7二と寄
まで289手で先手の勝ち

*1:多分保存容量の都合

*2:正確には今のコンピュータ将棋も水平線効果を完全に解消できたわけではないはずです。ただ、評価関数の精度が桁外れに高いことと、探索延長をより適切に行えることと、読みが恐ろしく深くなって水平線が数十手先という人間にも見えないほど遠くにいってしまったがために全くわからないだけです。なお、今のコンピュータ将棋の最後の無駄な王手ラッシュは多くの場合水平線効果ではなく、適切に読み切った上で最長の変化を選択しているケースがほとんどです。