※この記事は屁理屈に終止します。マジの技術を見に来た方はブラウザバックしてください。
突然ですが、スーパーマリオ64というゲームをご存知でしょうか?
1996年に発売されたNINTENDO 64用3Dアクションゲームで、そのアクションの完成度の高さから後の3Dゲームに大きな影響を与えたともいわれる名作です。
アクションの手触りは一級品で、インタビューで開発者の方々が語っている通り、動かしているだけでも楽しいものとなっています。
ボタン式の単純なカメラ操作も、後の時代に主流になるスティック式ほど細かい操作はできませんが、非常に直感的でした。
このゲームは24年の時を経て、Nintendo Switch用ソフト「スーパーマリオ3Dコレクション」に収録され現代に蘇ります。
この時SNSなどでよく見られた意見は、「今やるとストレスだらけだ。あれは思い出補正だったんだな。」というものでした。
しかし、本当に思い出補正だけなのでしょうか?
部分的には確かにそうでしょう。思い出は確かに美化されます。ただ、それだけではありません。
特にリリース直後の3Dコレクション版は実際には当時からの変更により、部分的には実際にストレスになりうる箇所があったのです。
具体的には、操作遅延の増加とコントローラの違いです。
まず、操作遅延です。これがあると、プレイヤーの操作と実際のキャラクターの動作にタイムラグが生じます。
これはアクションゲーム、それも操作の手触りが最大級の魅力だったスーパーマリオ64においては少なからず影響があります。
次に、コントローラの違いです。
先述のボタン操作を前提としたカメラ操作にスティックに無理やり当てはめたがために、操作が非直感的になってしまっているのです。
なお、今ではSwitch用の64風コントローラが存在するため、こちらの問題は解消可能です。
その後に配信されたSwitch Online版64にはもっと大きい問題が多数ありましたが、SNSではだいたい思い出補正が原因でプレイヤーの記憶のほうが間違いということになっているようにみえます。
さて、ここでようやく互換機の話です。
レトロゲーム互換機POLYMEGAの開発元はインタビュー中、このSwitch Onlineの問題に触れられた際、開発中の64互換モジュールでは「少なくとも90%のゲームでほぼ完璧(near perfect)に動作する」としています。*1
更にこの互換機は、公式HPでは低遅延も売りにしているようです。
さて、私は64のこのへんの事情には日本人平均よりは詳しいかと思うのですが、この互換機の構成で90%のゲームを低遅延かつ完璧に動作させることはまず不可能だと思われます。
ただ、彼らも完璧とはいっていません。「ほぼ」完璧に動作するのです。
また、レトロゲームのエミュレーション分野で有名なlibretroチームはTwitterで「64のエミュレーションは99%のユースケースで問題はない」と主張していますが*2、これも「99%のユースケース」がなにを指すのかがはっきりしません。少なくとも全タイトルに占める完全に動作するタイトルの割合でないことだけは確かです。ただの言葉遊びです。
そこで私は思いました。「"ほぼ"の解釈を無限に拡大し、他者からのクレームをすべて思い出補正だと突っぱねれば部品代けちった互換機を作れるのでは???????????」
さあ、格安互換機づくりをはじめましょう。
どこまでの品質なら許されるのか?
いくら思い出補正だと主張しても、流石にユーザーに「そういうものだ」と思わせられなければおしまいです。
様々な事例から許されるラインを探っていきましょう。
公式の事例
とりあえず任天堂公式が配信したレベルなら許されるとみなしていいでしょう。
ゼルダの伝説 時のオカリナでは、遅延や処理落ちが増えていたりテクスチャがおかしかったりするプラットフォームも多い他、Wii Uで配信されたものは早くテキストを送るだけでバグることが知られています。
また、通常クリアには支障ありませんが、攻略本なしで100%クリアするにはないときついアイテムが使えなかったりします。
マリオ64等でも声がぶった切れたり音が映像とズレたりしてますし、F-ZERO Xではレースゲームにおいて非常に重要なフレームレートが安定しないという報告もあります。
やりこみはともかく通常クリアまでたどり着けることができれば問題ないくらいのノリみたいです。
互換環境を使用した実況動画をみてみる
現代において、実況動画や配信はすっかり定着しました。レトロゲームをプレイしている人もよくみかけます。
こうした場所のコメントを見ると、動画から読み取ることができる視覚・聴覚情報の再現度に対するまとまった意見を得ることができます。
ある日、私はチャンネル登録者数5桁のそこそこ人気な方の実況プレイ動画をみていました。どうやらレトロゲーム機で発売されたターン制ボードゲームをプレイされているようです。
そこで、あることに気が付きました。
プレイヤーは実機であるかのように振る舞っていますが、エミュレータです。
実機と挙動が違います。
そして、その動画を先まで見ていると……。
なんということでしょう。画面がバグり散らかして途中から半分目隠し状態になっています。特定のエミュレータとプラグインでプレイしたときに起こる現象です。
わざわざエミュレータでプレイしているのは、実機をキャプチャする環境がないからだと思います。今どき店頭ではアナログ端子のキャプチャ売ってませんしね。
ただ、はっきりいってこの状態で強行してクリアする難易度と、実機とキャプチャ環境を用意する難易度どちらが低いかといえば明らかに後者です。
なんなんだよこのスーパープレイは。
そして視聴者はというと……。
一部エミュレータではないかと指摘するコメントはありましたが、概ね受け入れられているようです。
多数の視聴者が画面がほとんど見えないゲームプレイを肯定しているのです。
このことからわかるのは、画面表示なんて完全に破綻していても大多数は受け入れるようです。
つまり、視覚情報はなくてもレトロゲームならそういうものだと思わせられるのです。
エミュレータや互換機でプレイをする配信者と視聴者が、本来と違う形になったゲームを、ゲームそのものの責任として叩きまくる様子はこれ以外にも目撃しています。
これはただの一例に過ぎないのです。
そして、インターネット時代において原本からの変化が許されるかどうかは多数派によって決定されます。
原作でしっかりしていた弓道描写が派生作品でおかしくなっていたことを指摘して袋叩きにあっている人がいます。
一方で、これが銃火器であれば、弓道経験者よりもミリタリー好きのほうが数が多いためか今度は作品が袋叩きにあいます。
レトロゲームの場合、視覚情報が必要だと思っているのは細かいことを気にする私のようなレトロゲームオタクだけです。
おそらくもはや多数派である動画視聴者には画面なんていらないのです。
叩かれるべきは我々です。
これが民意だ。
早速作ってみよう!
画面すらいらないならもうなんでもいいです。
なんでもいいから石ころとかを用意します。
それがあなたが望んでいたゲームです。
かつては目の前に画面があった?そんなのは作られた思い出です。
画面なんてない。どこにも楽しい体験なんて本来はなかったんだ。
君たちの記憶のすべては思い出補正だし、昔の作品はよかったなんていってる老人の脳内なんて補正まみれですべてが偽りだ。
これが正しい互換機だ。民意が示している。
コスト:0円