PCを買おうと思ったとき、「とりあえず身近にいる詳しい人」に聞くことが多いと思います。
自分より詳しく信用のおける人が身近にいるのなら、その人に相談するのは自然ですよね。
でもPCに関して言えば、実はそれ、やめたほうがいいです。
私も職業がプログラマーなので平均よりはPCに詳しい自覚はあるのですが、他人にPCをおすすめして後悔させることを3回くらい繰り返し、さらに知り合いが他人にPCをおすすめして後悔させているさまを何度かみてやっと表題の事実に気づきました。
これだけ読むとネットによくいる主語デカ野郎と思われるかもしれませんが、実際調べてみるとTwitterで1人の初心者に複数人がPCを勧めている場面で大体意見が割れまくっており、ほとんどの人が最適解など出せていないことがわかります。
今回は自戒も込めつつその理由を哀しきPCオタクたちの生態とともに解説します。
もう二度と罪のない人が私のようなオタクの犠牲にならないために……。
なぜPCに詳しい人に聞かないほうがいいの?
「餅は餅屋っていうし、自分の詳しくないものについては詳しい人に聞いたほうが合理的でしょう」と思われるかもしれません。
しかし、実はそもそもPCオタクは「餅屋」ではないのです。
PCは「何でもできる魔法の箱」であり、すべての使い道に精通した人間はいない
あなたはPCと聞いてどういう用途が思いつくでしょうか。
メールやSNSでほかの人とコミュニケーションを取る人もいれば、Wordで文章を書く人、ブログに記事を書く人、PCでゲームをプレイする人もいます。
それだけじゃありません。絵を描く人もいますし、音楽を作る人もいます。生放送で世界中の人にリアルタイムで自分を見てもらうこともできれば、動画を編集したりCGを作って映画まで作れてしまうんです。
また、最近はスマートフォンで多くの作業をこなす人も多いですが、皆さんがスマートフォンで使うアプリはPC上で作成されます。スマートフォンのハードウェアそのものを設計するときにもPCは使われることでしょう。
はい。ここまで読んでお判りでしょうが、このすべての用途について詳しい人なんてこの世にいません。
それどころか、PCに詳しい人の「詳しい分野」は多くの人が考えているよりも細分化されています。
例えば仕事でも趣味でもプログラミングをして四六時中PCを触っている私よりも、インスタグラムの使い方であればそこらへんの高校生のほうが詳しい人が多いと思いますし、Microsoft Wordの使い方についていえば一般の主婦である私の母のほうがはるかに詳しいです。(というかインスタの使い方も母のほうが詳しいです。)
「とはいえ、何か一分野でも詳しいとPCを選ぶのに役に立たないの?」と思われるかもしれません。しかし、例えば絵描きの人は紙に詳しい人が多いと思いますが、だからといって漫画家の方にガラス製品の梱包に使う紙の選び方を聞きますか?
更にPCオタクの厄介な点は、自分がどの分野に詳しいのかぼんやりとしか知らないことです。
私を含めPCに詳しい自覚のある人は、「まあ普通の人がやりたいことならやればできるだろうしアドバイスもできるだろう」という根拠のない自信を持っているケースがあります。
そして変なアドバイスをして周囲を巻き込んで自爆するのです。
PCに詳しいことと、初心者にぴったりのPCを選べることはイコールではない
「じゃあ自分と同じ用途でPCを使っている詳しい人に聞けばいいんだね」と思われるかもしれません。これは確かに適当にPCに詳しい人に聞くよりは大外ししづらいですし、非常に有効だと思います。
しかし、この場合にも気を付けるべき点があります。
というのも、PCに詳しい人は、PCの使い方にも詳しいためです。
多くのPCでは、様々な人が便利に使うためにいろいろな機能が搭載されています。最近では声でPCを操作するなんて場面もよく見るようになりましたね。
しかし、多くのPCオタクはほとんどの操作をキーボード入力の組み合わせだったりマウスによるジェスチャーだったりで高速にこなすことができるのです。
同じゴールに向かっていても、通る道が全く違います。しかも、それが当たり前になっているので、ついうっかりそれを前提にPCをお勧めしてしまうことがあります。
更にそういった常に最大効率でタスクを行う術を持っている人にとっては、PCの多くの便利機能は不要なものです。それらの彼らにとって不要な機能を全て無効化し、必要な機能は有効化することで、彼らはPCのパワーを最大限引き出すことができます。
同じPCでも詳しい人が使うのとそうでない人が使うのとでは発揮できるパワーが違うのです。
また、PCオタクが初心者にPCについて語ったらドン引きされるのが関の山です。そのため、PCオタクが普段PCについて話す相手もPCオタクなので、初心者と感覚が無意識のうちに離れていることがあるのです。
更に言うと、今現在PCを使いこなしている人間もPC初心者だった時代を一度しか経験していません。
つまり、その人がPCショップ店員やパソコン教室の教員でもない限り、PC初心者がどんな時に困るのかということをほとんどしらないのです。
これでは初心者向けのPCなんて選びようがありません。
なおガジェット系YouTubeチャンネルやガジェット系ブログについても、普段からPCについて調べているPCオタクをターゲットにしてる場合が多いので、初心者の参考にならないケースが多いです。(このブログのNANOTEレビュー記事もそうです。わかっている人以外参考にしちゃだめです。)
いろんなPCオタク
「PCに詳しいことと、初心者にぴったりのPCを選べることはイコールではない」といいましたね。
では、PCオタクは、どのあたりの感覚が初心者と乖離しているのか。金銭感覚はPCに限らず大体のオタクが初心者と乖離していますが、それ以外にどこが乖離しているのか。それをタイプ別に説明していきます。
速度至上主義者
PCは高速に動いてこそであり、スペックこそがすべてだというタイプの人です。
当たり前ですが、一般にPCはスペックが上がるほど値段が高くなり、サイズも大きく重くなり、発熱や消費電力も増します。
しかし、彼らにとってこれらの要素は速度に比べたらどうということがありません。
例えばノートPCでは軽さは大切ですよね。最近では700gを切るノートPCも出てきており、タブレットとはいえiPadが500gを切っていることもあり、1.3kgを超えるノートPCは重いという方が多いと思います。しかし、私の知り合いには3㎏近いノートPCを旅行だろうが散歩だろうが常時持ち歩いていた人がいます。旅行ならまだしも散歩中に3㎏のノートPCを使う機会があるのかはよくわかりません。
彼は他人が持ち運び用のPCが欲しいといっているときにも「いや確かに3㎏は今時重いかもしれないけど、2.5㎏くらいは軽いでしょ?」といっていました。いやPC大好きな俺ですら重いと感じるわ。
おそらく高速なパソコンを持ち運べるという喜びで感覚がマヒし、彼には3㎏のPCがヘリウム風船くらいの重量に感じられているのだと思います。
価格至上主義者
「PCは目的をこなせればいいので、できる限り安いものを勧める」というタイプの人です。
このタイプの人は必要最低限のスペックのPCを勧めてくることが多いのですが、必要最低限のスペックのPCを使いこなすには、そのPCのパワーを100%引き出すために軽量化などの知識が必要だということが完全に頭から抜け落ちている場合があります。
また、安いPCを売っているメーカーはその分サポートが悪いこともあるのですが、それは自分で対処する前提なので考慮に入れません。
以前PCに詳しい方が他の方に異常に低スペックなPCを勧めており、私がそれを止めて4倍近く性能のいいマシンに変えさせたもののそれでも圧倒的にスペック不足だったことがあります。あと10倍は必要だったようです。
私自身も極度の低価格PC大好き人間だということを完全に失念していました。
ちなみにこのタイプの人は低価格なPCを見かけるとつい衝動買いしてしまう場合があるので、結果的に出費が抑えられていないことがあります。
小型軽量至上主義者
身軽にPCを持ち運べることを喜びとする人です。
しかし、軽量なPCはお値段が高かったりスペックが低かったりします。
この手の人は使い方を工夫することも楽しんだりしますが、長期間使っているうちに徐々に感覚がマヒし、それが当たり前に思えてしまったりします。
なお私は小型軽量なマシンも好物なのですが、他人に12インチのPCをお勧めしたら「画面が小さいしキーボードも小さいので肩がこる」といわれました。私自身は当時10.5インチ、今は7インチのPCをゴリゴリ使っているので、まさか12インチが小さいといわれるとは思っていませんでした。(今主流のモバイルPCは13.3~14インチくらいらしいです。)
質感至上主義者
「常に使うものなのだから所有欲を満たせるものにすべきだ」という主義の人です。
当然PCは製品によって基本性能以外に細かい作りの良し悪しも変わってくるのですが、それをどこまで求めるかは人によります。
極端な例でいうと、私の母は父に買ってもらったPCにスワロフスキー・クリスタルがあしらわれていることに次のPCに買い換えるまで気づきませんでした。(なお、このケースでは父もそんなものとは知らずに買ったらしいのですが。)
あとキーボードの打鍵感などにも機種による差はありますが、これは好みがめちゃくちゃにわかれてそれこそ宗教戦争になるので、自分で店頭で触ってみて決めるしかない気がします。
Microsoft製品不要論者
「今どきWindowsやOfficeなどのMicrosoft製品なんて必須じゃない」という意見を持つ人です。
私も基本はこの派閥で、自分もWindowsはほぼ使いませんし、他の人に相談を受けた場合にはWindows以外のOSだったりOffice非搭載のPCを選択肢として提示することも多いのですが、それにしても限度はあります。
例えば有名な文書制作ソフトのMicrosoft Word以外にも優秀な文書制作ソフトはたくさんあります。他人に見せたい場合にもPDFなどに出力すれば問題ありません。ONLYOFFICEのようなMicrosoft Officeとの互換性が高いソフトなら、Microsoft Wordでも比較的まともに開くことができる文書を制作することも可能でしょう。
しかし、仕事やサークルなど複数人で文集などを作ったりする場合、全員が同じソフトを使っていないとレイアウトに不整合が生じることがあります。
こういう事情がある場合にも「いやなんとかなる」と強引にMS以外のOfficeを勧めてくる人もいますが、他の作業メンバーの使用ソフトを1人のために変えさせるハードルって結構高いので、初心者に乗り越えさせるハードルの高さではありません。
林檎信者
Apple製品を至高だと思っている人たちです。
Apple製品のメリットを理解して他人に勧めることができる人はいいのですが、中には仮にMac上だとしてもMicrosoftの息がかかった技術を使うことすら忌み嫌い、自らの周囲の環境からMicrosoftを排除しようとする林檎原理主義者の方もいらっしゃいます。
学生時代、授業でC#(Microsoftが作ったプログラミング言語)を使わないといけなくなったときに同級生のAppleユーザーが発した「いや、宗教上の理由で無理なので」という言葉はわすれられません。
ノーガードファイター
セキュリティを全て無視し、マルウェアやスパイウェアがいっぱい入ってるPCやスマホを平然と他人に勧める人です。
大体指摘すると「GoogleやMicrosoftに個人情報取られてるんだし、取られる相手がちょっと増えてもいいでしょ?」と言ってきますが、その手の小悪党は取得した個人情報にGoogleと同水準の保護を施すことができません。(※GoogleやMicrosoftなら無条件に安心といっているわけではありません。本当なら彼らにどういう情報を渡しているかもできるだけ把握したほうがいいと思います。)
つまり、マルウェアやスパイウェアを仕込んだやつのみならず、そこらへんの第三者に個人情報を取られたり、PCを遠隔操作されてしまう可能性があるのです。
利用者本人が大丈夫でも、利用者になりすまして利用者の家族を狙ってくることもあります。
そのあたりのリスクの説明をすっ飛ばしてリスクを取らせようとしてくる人がいるのです。気をつけましょう。
なお、ウイルス対策ソフトを追加でインストールしろといっているわけではありません。
最近はウイルス対策ソフト側に穴があって逆用されたり、ウイルス対策ソフトそのものが悪さしてたりということも多いので、下手なのを入れるくらいならOSに最初からついてくる保護のほうがいい場合も多いのです。
太古の化石人間
IT業界は日進月歩であり、短期間情報収集を怠るだけで一気に置いていかれます。
例えば2019年にはAMD社のCPUを搭載したノートPCは熱を持ちやすいといわれていましたが、今では大幅に改善されています。
基礎知識を持っている人であれば最新情報をキャッチアップするのも早いのですが、たまに情報をキャッチアップできていないのに他人からの質問に自分の中の知識だけでこたえようとする人がいたりします。
知識に自信があってもその都度調べないとだめなのです。
じゃあどうすればいいの?
ここまでを読んで「PCに詳しい人に聞くのもだめ、ネットに書いてある情報も取捨選択が難しい。ならどうすればいいの?」と思われたことでしょう。
基本的に人に選んでもらわなければいいのです。
つまり、いろんな人の意見を聞いてそれを参考に調べて自分で選ぶのが一番です。
ここに私が考える方法を書きますが、検証したわけではないのでこれがベストではない可能性もあります。
全面的に信用すると危ないが、基本的に家電屋の店員はPCを選ぶプロである
普段からPC初心者の相手をしていて聞きにいける相手として、家電量販店の店員がいます。
彼らは普段からPC初心者の相手をしており、真面目な方であれば常に最新の知識を得ています。
とはいえ、店員にも当たりハズレが大きいので、全面的に信用することはできません。
お客をカモとしか思わず嘘しかつかない店員や、ろくに勉強していない店員も割といます。
家電屋の店員とPCオタクのハイブリッドは強い
ここでPCオタクに聞きましょう。店員に言われた内容に露骨な嘘があれば否定してくれるはずです。
とはいえPCオタクも先述の通り初心者の方とは感覚が大きく乖離している場合があります。
どちらの言い分も話半分に聞きましょう。
そして最終的には店員の言い分とPCオタクの言い分を加味してPCを選びましょう。
手間かもしれませんが、PCは基本的に高い買い物です。
失敗したら大変なので、しっかり選びましょう。
まとめ
選んでもらうんじゃなくて、意見は参考にしつつ自分で選ぼう!
ちなみに私はいろいろ人に話すのが好きなので、今後もPCについて聞かれたら喜んで相談に乗ると思います。
ただし役に立つかは知りません。(無責任の極地)